猫バス北海道漫遊 九日目 上富良野〜夕張〜十勝清水〜大樹

上富良野日の出キャンプ場の朝。
夕べの雨は 猫バスを雨ざらしにして たっぷり濡らしてしまったようだ。

すぐに拭いてやるが 雨がまた降ってきて 無駄になる。

雨が降ったりやんだりで テントを撤収するタイミングを失い なかなか荷作りできない。

昨日酒盛りしたお二人も 次々出て行かれ 私だけのんびりしていた。

その後 雨が降り止んだ合間 ようやくテント撤収。

雨が降るのを承知して キャンプをやったんだから ま、しょうがないわな。

でもここで今年も野営できて とても嬉しい。

フライとテント グランドシートを丁寧に拭いて バイクももう一度拭いて それからちょっと一休みして周りを見渡す。

喫煙者なら ここで一服するところだが 生憎私は煙草を吸わないので ペットボトルのお茶を飲む。

雨の降っている間に 随分バイクが減った。

富良野盆地の雨は小休止したようだが 周りの山間では まだ雨雲が頑張っているようだ。

 一息ついてから 出発すると キャンプ場の出口で 一人のライダーに呼び止められた。

「出口を出たところで 昨日の雨で流れ出した泥が 道路に溜まっていて 注意して走行しないと スリップして転倒してしまいます。気をつけて!」

「朝から3台転倒しています ドカティとVFRと・・・私と・・・」

転倒したご本人さんからの アドバイスでした。

貴重な情報をありがとうございます。
あなたは立派です。


案の定富良野盆地を出ると 雨が降ってきた。
山あいをショートカットして桂沢湖から 夕張へ向かう。
桂沢湖から先は 車は殆ど通らない。

夕張駅を捜すが とても小さな駅で 見落としそうになった。
近くのセイコーマートの方がよほど目立つ。

左側の建物が 夕張市が経済的に破綻する原因になった問題のホテルだ。

目立った観光に乏しいこの場所に 似つかわしくない豪華なホテルで 私のような素人目で見ても むちゃくちゃな誘致計画があったことが分る。

北海道には このような無謀ともいえるリゾート施設が幾つもあって この国の利益誘導と 税金の無駄遣いを目の当たりにする。

いわば 現代の日本の縮図がここにある。

作ってしまえば後は野となれ山となれ。
後を引き受ける人はたいへんだろうなぁ。



ツーリング用品販売店 快速旅団は 夕張駅の傍にある。
団長近影(許可済み)

なかは面白いもの多数。
ツボを抑えた野宿用品、防寒ウェアなど 北海道ツーリングに的を絞った かなりマニアックな品揃え。

こういうショップが見たかったのだ。

ホームページがあって 通販でも商品は手に入るのだが 私は関西人 実際に手にとって見ないと信用できない人なので はるばる出かけてきたのだ。

団長さんはダンディでやや寡黙な人だが そこがまた誠実そうな人柄が出ている。
低いトーンの美声は音楽的で聞いていて気持ちが良い。

声といい風貌といい 巨椋佳さんを思い出した。
こちらの方がもっと男前ではあるが。

外から見て 何を売っている店か 一般の人には分りにくいようで 外から覗きこむ人がいて 私が外へ出ているときに質問された。

この店にはちゃんと番犬がいて 可愛い柴系の犬なのだが 不審者と見て 威嚇して番犬の役を果たしていた。

ツーリングで立ち寄った人には フリーパスで眠っていたのに 客以外の人が外にいるだけで とたんに玄関に来て 店を守るように唸りだした。

賢いやつだと頭を撫でながらなだめてやると 横になってひっくり返って 腹を見せて 信頼の印を見せてくれた。
客と不審者をちゃんと区別している。

この 話しかけてきたおじさん 並びの他所の家の中を次々覗きこみ 確かに怪しい”風”だ。

ここでお昼ご飯と美味しいコーヒーをいただいた。

食べかけてから 慌てて写真をとったので 半分なくなってて 何がなんだか分らないが この店オリジナルの「快速丼」だ。

缶詰めのツナを卵で閉じて ダシで炊いて のりやネギ 青海苔 鰹節?(たぶん)をかけてある。

あっさりした お好み焼き味の丼で とてもヘルシーな丼だ。
わりと美味しくて 大阪へ帰ってから 真似して作ってみようかと思った。

コーヒーも美味しくて 来年からリピーターになりそうな予感。

たぬさんに教えていただいた プリムスのマルチバーナーを 思わず衝動買いしてしまった。
大きな買い物だったが 帰ってから買わずに後悔するより ここで思い切ろうと思った。
ただし日本では未発売の品物なので 使うのは自己責任なのだ。

帰ってから使っているが いい買い物をしたと思っている。

夕張にいる間は 雨は降らなかったけれど
快速旅団を出てR274に出たとたん 雨のお迎えがやってきた。

どうやらこの先凄まじい雨雲が待っているようだが 今日は目的地があるので そのまま雨雲の下へまっしぐらに突き進む。

雨は承知 霧も風も悪天候も承知。

時には嫌でも前につき進まなければならないことも 旅先ではあるのだ。

こういう日の雨は 容赦なく降ることが多い。
 
R274を道東方面に向けて走り出し 日勝峠へ
樹海ロードを進むと 峠付近で 事故の現場検証が行われていた。

道路にはクルマが数珠繋ぎの大渋滞。
それでもかまわず ゆっくりじっくり検証は行われている。

事故というのは本当にはた迷惑なものだ。

雨の止んでいるうちに 峠を越えてしまいたい。
峠を越えると 霧が出て それが霧雨になり 峠を越えると本格的に雨が降り出した。

真っ直ぐ帯広にはいかず 途中清水ICの手前から南下して 道々を走り帯広空港方面にむかい
そこから中札内へ出る。

その間一時間ほど ずっと前が見えなくなるくらいの 土砂降りの波が何度もやってきて 立ち止まること数度。

しかし牧草地の真ん中で 雨宿りする場所もなく ひたすら我慢して雨中走行に徹する。

自慢の透浸防水ウェアも役に立たず じわじわと雨がしみこみ 下着の胸のあたりは濡れて気持ちが悪い。
しかしウェアの下は パンツもブーツも水の浸透はなし。

ブーツはゴアテックスのショートブーツで ツーリング前に新調したものだが パンツは例の中標津のホームセンターで水産加工業者コーナーで買った 一番安物のぺらぺらのものだったが 「完全防水」とうたってあっただけに 浸水はなし。

まさに完全防水だ。

ただし蒸れて臭くなるので 使った後はよく干さなければならない。


R236に出て道の駅中札内に逃げ込む。

ひさしの張り出した 屋根のある場所に入れさせてもらったが 1時間たっても雨の止む気配がない。

売店の人に 今日の雨の状況をお聞きすると 私がやって来る前は 晴れていたらしい。

またやってしまったか(笑)

 先ほどから バイクの様子がおかしい。
エンジンがスムーズに回らず片肺症状のようだ。

でも一気筒死んでいても 普通に走ってくれるところは ビッグバイクならではの強みだ。

ひとつ死んでも三気筒だし これでも排気量は約900cc。
ニンジャやVFRとおんなじくらいだし まあいいか。

そういう問題だっけ?(笑)

どこかのスタンドで晴れたら手当てをすることにして(ひすあきさん アドバイスをありがとう)
とりあえず 土砂降りの中 先へ進むことにした。

今日中に襟裳岬まで行きたかったのだが 無理なようだ。

雨は止んだのだが 忠類町からは濃いガスが出てきて 走行が危険になってきた。

前にお邪魔した 道の駅コスモール大樹に 今日は避難することにした。

道の駅の営業が終了するまでの間は 邪魔にならないように 端に荷物を置いておいて 道の駅情報コーナーのパソコンで天気情報を見る。

今いる場所の少し北側の日高山脈北嶺付近に向かって 真っ黒な雨雲が次々ぶつかって 大雨を降らしているようだ。

いまは雨抜けしたようだが この位置から動くことができないのではないかと心配になった。
襟裳岬方面は雨が少ないようだが 岬を回ってその先へ進むと 雨雲の本隊にぶつかる予想だ。

明日までに雨雲が退散してくれるのを祈るばかりだ。



この道の駅にもイートインコーナーはあるが よく見かけるスーパーのものらしく 期待できないので スーパーの惣菜コーナーで寿司とつまみ ビールを買う。

前に来た時は 生の牡蠣や焼き鳥を買って豪華な晩餐をしたが 今日は握り寿司にしておこう。

道の駅構内では 火気厳禁だ。
たとえ野外でも ストーブでお湯を沸かすこともいけない。

面白いものを見かけたので 酒のつまみに購入した。
畑の肉とは 大豆の加工品らしい。
関西では見たことがない。

牛肉の大和煮に見立てたものらしく 佃煮風だ。
甘辛く(あまじょっぱく?)味付けした 「人造肉」は 酒のつまみというより ご飯のおかずになりそうだ。
不味くはないが好きではない。
でもちゃんと全部食べた。
食べ残しは主義ではない。

遅くなって現れたのは ハスラー50に乗った 金沢の大学生。
2stの50ccで北海道を回っておられるようだ。

私も昔はこんな時期があったなぁ・・・・
と懐かしく思いながら 彼の話を聞いていた。

「去年も来たけど トラブルで途中で帰った」 
「フムフム」
「今日は苫小牧に船で着いて ここまで走りました」
「フムフム」
「お金がないので 無料のライダーハウスか 無料のキャンプ場に泊まりたいです」
「フムフム」

なつかしーなぁ

この日はしばらく話しこんだが お互い疲れていたので 早々に就寝した。

しかし なつかしーなぁ。

きっと彼のこの先の旅は 楽しいだろうなぁ。

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